マイナスの想念の場にとどまらない
人の行動や行為は潜在意識にコントロールされています。
自分の意思では「あがるまい」と思ってもなかなか話し方が思うようになりません。それは「あがるんじゃないか」という自分の思いが心の習慣性になっていて、その心にひきずられるからです。心で習慣的に思いめぐらしているものが潜在意識に蓄積されていき、自分の行動や行為がコントロールされていきます。これを別の言葉でいえば "心の強制力" といいます。

「あがらないで落ち着いた話し方をしたい」と思いながら、もう一方で「またあがるんじゃないか」と考えているとなかなかあがり症はなおりませんし、話し方にも自信が持てません。あがり症に限らず全ての思うようにならない原因はここにあります。
自分がマイナスの想念を持ち続けながら、プラスの結果を得ようとしても無理です。プラスの成果を得ようと思えば、日常の想念をプラスに変える努力が必要です。
話し方が苦手な人の場合ですと、練習をして苦手意識を少しづつ「私にも出来る」というプラスの想念に変えていけば必ず変わります。話す機会から逃げるというのは、マイナスの思いを固定化させ、心の習慣性により現状を変えることがますます出来なくなります。常に一歩前に進むことで、心の習慣を変えることが出来ます。大切なのはいつまでもマイナスの想念の場にとどまらないことです。
あがり症対策にカナエ理論

苦手を克服するのに確かな効果をあげる方法として、カナエ理論の応用があります。カナエというのは鼎と書きます。3本の脚がついている古代中国の金属製の器のことを言いますが、三本の足は安定します。
たとえばあがり症の克服を例にとりますと、まずあがり症を克服したい場合、一人で本を読んだり呼吸法だの催眠法だのスピーチの練習などを行います。しかし一人の行為ですと効果があったかどうか不確かです。また試行錯誤のやり方になりますからさほどの効果も期待できないでしょう。そこへその人をサポートする専門家がつくとあがり症克服の成果はうんとあがります。一人より二人です。サポートされることで大きくパワーアップします。サポートする人にもよりますけど、確実に効果が出ます。
その効果を安定させ確実に身につけるための働きをするのが、仲間です。同じ苦手を克服しようとする仲間がいるととても心強いサポートになります。本人と講師と仲間による三点支持の図式です。これがカナエ理論の応用です。もっともカナエ理論という言葉は辞書には載っていません。たぶん私が初めて使った言葉だろうと思います。
このカナエ理論を応用したもう一つのあがり症の対策があります。それは『心の安定』で述べたハンカチやマイクなどを握るという方法です。これも心の安定のためのカナエ理論の応用です。